会員の皆様方におかれましては，益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
　昭和61年（1986年）に日本会計研究学会第45回大会を横浜国立大学で開催して以来、この度、28年ぶりに2回目となる第73回大会を本学で引き受けさせていただきました。本学の教員、大学院生にとりまして，これに過ぎる栄誉はないと存じております。
　さて、近年の会計学研究は、グローバルな経済環境の下で、多岐にわたり、しかも研究の速度が加速されてきています。これまでの会計学に代表される財務会計、管理会計、監査論の研究領域は相互に近接し、境界が低くなり、複合領域での革新的な研究が報告されています。また、会計学と経済学、統計学、経営学、心理学、情報学などの近接学問領域との共同研究も多数実施されています。 会計学を中心とした研究対象は様々な学際領域を包含して、日本を含めたグローバルなビジネスに適用され、その手法もケース・スタディ、実証的アプローチ、歴史研究、これらの複合アプローチ等が適切に組み合わされて実施されています。 こうした最近の会計学研究の方向性に適合した会計研究学会の統一論題のテーマは、グローバリゼーション下での会計学研究の「多様性」と「学際性」に纏められます。このような問題意識から、本大会の統一論題のテーマは「価値多様化時代の会計」と決定しました。
　本大会の特徴は３つあります。
　第１は統一論題を従来の財務会計、管理会計、監査という３会場から、「価値多様化時代の会計」の本質を踏まえて５会場を設定しました。各会場におけるそれぞれの現代的なテーマは「財務会計における資本と利益－会計基準の動向と新しい研究課題」、「会計情報の多様化と統合報告」、「価値多様化時代の管理会計」、「監査判断と懐疑心―新しい研究機会を求めてー」、「会計基準の多様化と税務会計」です。 　　
　 税務会計領域、環境会計領域を念頭においた統合報告などの新領域における統一論題が本大会では提示されています。 　　　　
　第２は会計研究学会における多様な研究報告の量が増加したために、研究報告スペースと司会者の確保にできる限りの努力を行い、研究報告の応募者全員に報告機会を与えることが出来ました。「価値多様化の時代における会計」を一人でも多くの研究者に報告していただき、会計学研究の多様性を報告会場で示していただきたいと準備委員会一同は考えております。 　　　　
　第３は本学会の運営に産学連携による株式会社日産自動車のご協力を得て、産学連携のモデルケースを示せたことです。横浜国立大学と株式会社日産自動車は産学連携の包括協定を提携しており、本大会の開催にNISSANホール及びその周辺会議室を特別に借用することが可能となりました。 　　　
　また、今後の会計研究学会本大会の運営について、可能な限り外部資源を利用し、名簿の作成、フルペーパーの登録などの大量で労働集約的な作業を外注としました。これら活動の記録、予算を電子情報化し、今後の大会運営校の負担を可能な限り軽減する用意をいたしました。 　　　
　最後に、本大会の各報告については、日本公認会計士協会の継続的専門研修制度におけるCPE認定研修として承認されています。研究者と会計専門職の皆様方との交流の機会になればと考えております。

日本会計研究学会 第73回大会 準備委員長　溝口周二