ご挨拶 会員各位

日本会計研究学会の会員の皆様方におかれましては、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

本年におきましては、日本会計研究学会第77回大会を神奈川大学において引き受けさせていただきました。開催場所といたしまして、大会初日はパシフィコ横浜を、大会2日目及び3日目は神奈川大学横浜キャンパスを設定しております。全国大会を神奈川大学で引き受けることは、大変名誉なことであることを肝に銘じ、会員の皆様にご満足いただけるような運営を目指す所存であります。

さて、本大会では、統一論題のテーマを、「21世紀における会計理論の再構築」としております。この統一論題のテーマを決定する際に我々が行ったのは、会計をめぐる環境についての虚心坦懐な再認識でした。そこには、残念ながら明るいものは見出せませんでした。足元では、会計(学、ゼミ)の不人気、会計関連試験の受験者減、AIの進化に伴う会計(公認会計士・税理士等)の不要論等があり、さらに会計研究においても、研究手法の画一化・単線化の傾向が世界的にも強まっていることが指摘されています。こういった会計の危機は、20世紀後半にはすでに指摘されていたものの、21世紀に入ってからより顕在化してきたと思われます。しかし、このような状況を環境の変化であり仕方がないことと、会計研究の側から達観しているわけにはいきません。そもそもこのような危機は、21世紀の環境に適合した、新たなそして骨太な会計理論が無いことが招いた結果とも考えられるのではないでしょうか。しかしながら、一気に画期的な新理論を形成することはできません。それでも、諦めることなく、まさに今こそ、漸次的に次代に適合した会計理論を構築すべきではないでしょうか。

このような問題意識から、本大会の統一論題テーマは「21世紀における会計理論の再構築」といたしました。さらにその上で、以下の4つの視点から、議論を行っていただきたいと思います。

まず第1の視点は、日本から世界へ打って出られる研究を探っていただきたいというものです。これまでの日本の会計研究は、ややもすると諸外国の動向の吸収・消化が主で、日本から世界に打って出るという視点、日本発の会計理論構築という視点が乏しかったように思えます。第2の視点は、世界的な会計研究の単線化に対して、複線化ないし別路線の提示可能性をさぐる視点です。日本の会計研究の強み・独自性に、規範研究と共に歴史研究があると指摘されています。ならばこそ、歴史的パースペクティブを現代会計研究に持ち込むとどのような発見があるか、といった新たな視点があると思えます。第3の視点は、AI時代において、これまでの会計実務、会計基準、会計監査、会計研究等が従来のままで良いのか、という視点です。AI時代に適合した、新たな会計実務、新たな会計基準、新たな会計監査、そして新たな会計研究は、一体どのようなものになるのか、またなるべきなのかについての議論が必要になっていると思われますそして第4の視点が、現行で、他に先駆けて日本で進展している会計研究領域を再確認する視点です。この領域には、日本における中小企業会計研究があると思われます。

以上4つの視点から議論を展開していただきたく、「日本からの情報発信を目指して」、「歴史的パースペクティブの復権」、「AI時代における会計」、「日本における中小企業会計」の4テーマを設定しました。

本大会の統一論題の特徴として、従来の財務会計、管理会計、監査等の学問分野による会場分けではなく、統一論題テーマのもと、上記4つのテーマごとの会場分けになっていることがあげられます。皆様の興味関心に応じて会場を選んでいただきたいと思っております。我々準備委員会といたしましては、「どのテーマもおもしろそうで、会場選択に迷ってしまう」といったようなお声を頂戴できるよう願っております。

かつてA.C.リトルトン(Littleton)は、「光ははじめ15世紀に、次いで19世紀に射した」と記しました。さて、我々が存在する21世紀に光は射すのでしょうか。それとも、暗闇の、暗黒の世界が訪れるのでしょうか。我々のレーゾンデートルである会計研究が、暗闇に覆われた暗黒の世界になることを是とする会員はいないはずです。21世紀にも光が射すべく、会員の皆様と、新たな会計理論の構築に向けて議論が展開されることを願っております。

日本会計研究学会 第77回大会準備委員会

準備委員長:
岡村 勝義
準備委員:
  • 大田 博樹
  • 小川 淳平
  • 奥山 茂
  • 関口 博正
  • 照屋 行雄
  • 戸田 龍介
  • 西川 登
  • 平井 裕久
  • 真鍋 明裕