当学会の沿革(第1回大会まで)
2026年1月12日
(以下敬称略)
1.日本會計學会(Japan Society of Accounting)の設立
神戸高商教授であった東奭五郎は、定年前の1916(大正5)年に辞任して会計士となり、会計事務所を開業した。開業後、仕事がなく、毎日会計学の文献や外国雑誌を読みふけるうちに、東はアメリカのJournal of AccountancyやイギリスのAccountantのような雑誌を発行することを思いついた。この思いつきを早稲田大学教授の吉田良三と大阪商業学校教授の下野直太郎に語ったところ、下野の同郷同窓であった東京海上保険の社長の各務鎌吉と、東・下野・各務と一橋高商で同期であった神戸高商校長の水島鉄也の援助のもとに、1917(大正6)年3月に日本會計學会が創立される運びとなった。
日本會計學会は会計の専門学者の他に多数の実業家及び会計実務家を擁していた。しかし、約1,000名の会員のうち、会計の専門学者は100名前後にとどまっていた。日本會計學会は純然たる学術団体ではなく、会計学の啓蒙普及のための団体であった。
2.会計同好会の設立
吉田良三は、1935(昭和10)年のはじめごろ、太田哲三(東京商科大学教授)、三辺金蔵(慶應義塾大学教授)、長谷川安兵衛(早稲田大学教授)、黒澤清(中央大学教授)、岩田巌(東京商科大学予科講師)等を集めて、日本會計學会の中に会計同好会という勉強会を設けた。毎月1回、東京市の如水会館で例会を開催して研究報告会を行うとともに、若干の調査等も実施した。
なお、会計学同好会は、日本会計研究学会設立の後は発展的に解消して、研究学会の一委員会としての会計用語統一委員会となり、学会大会で研究発表を重ねた。
3.新学会の創立協議会の開催
日本會計學会は学術団体ではなく、会計学の啓蒙普及のための団体であり、大学高専の教職にある会計学者の学術研究組織を組織する必要が出てきたことから、1937(昭和12)年初頭、日本會計學会内に新しい学会の準備委員会が設けられた。発起人となったのは、会計同好会のメンバーであった吉田良三、太田哲三、村瀬玄(東京商科大学附属商学専門部教授)、三辺金蔵、長谷川安兵衛、岡田誠一(会計士)、渡部義雄(会計士)、黒澤清である。1937年6月26日に、在京の会計学者達に呼びかけて、如水会館で創立協議会が開催された。この創立協議会では、以下の事項について同意が得られた。
①会名は日本会計研究学会(Japan Accounting Association)とすること。
②会員の範囲を、大学専門学校において会計に関する講義を担任する教授講師に限定すること。
③年1回大会を開催して研究発表すること。
④創立理事会を年内に開き、会則を決定すること。そのための必要な事項を処理するため、常務理事の選任を発起人会に一任すること。
⑤日本會計學会とは提携的に並進すること。
⑥日本経営学会とは友好的関係を保つこと。
以上に加えて、会則草案も決議された。また、創立理事会に先だって、発起人会の協議によって、吉田良三、太田哲三、長谷川安兵衛、三辺金蔵、黒澤清、佐々木吉郎(明治大学教授)、原口亮平(神戸商業大学教授)、林健二(神戸商業大学教授)、青木倫太郎(関西学院大学教授)、陶山誠太郎(大阪商科大学教授)の10名が常務理事に選出された。
さらに、創立協議会の決議により、会則草案を原口亮平・林健二に送付し、関西方面の諸大学関係者を招集して、同様の協議会を持つことを委嘱した。関西では原口・林が発起人となり、1937年10月に協議会を開き、その協議により、関東協議会の議案に全面的に賛意を表明した。
4.日本会計研究学会(Japan Accounting Association)の創立
1937年12月24日、東京市の如水会館で日本会計研究学会の創立理事会が開催された。主な決議事項は以下の通りである。
①昭和13年5月に創立大会を開催すること。
なお、研究大会は毎年一回、関東関西交互に各大学が持回りで開催すること。
②創立大会の実行方法
「非常時局と会計対策」を統一論題として、統一論題報告会報告者を5名選出すること、自由論題報告会に5、6名選出のこと、改正商法と会計問題、資本概念討究の2題について円卓討論会を行うことが決議された。
③日本會計學会と提携し、大会の研究報告は、すべて『會計』を通じて公表すること。
日本会計研究学会の会員はなるべく日本會計學会の会員を兼ね、『會計』は日本会計研究学会が一括買い上げて、研究学会会員に配布するようにすること。
④毎年1回会報及び研究年報を発行すること。
⑤会計用語統一委員会を設置すること。
この創立理事会の開催日を以て、日本会計研究学会の創立日とすることが定まった。また、決議により会則も決定した、日本會計學会は爾後、新会員の募集拡張を停止し、日本会計研究学会の成長発展に専ら協力することとなった。日本會計學会の設立者である吉田・東・下野が1943(昭和18)年前後に相次いで他界した後は、新しい会員の入会を停止し、名目的存在となった。
5.日本会計研究学会第1回大会の開催
創立理事会の決議に基づき、全国146名の全国会員に対して、1938(昭和13)年2月、常務理事の連名で第1回大会の通知状が発送された。
第1回大会は、1938年5月20日(金)・21日(土)の2日間にわたり開催された。大会1日目、東京市の如水会館で午前10時より理事会が、次いで創立総会が開催された。その後、午後1時から、如水会館大集会室において統一論題報告会が「非常時局と会計対策」を統一論題として行われた。午後6時からは一橋講堂で公開講演が行われた。大会2日目は、午前10時より円卓討論会が、午後1時より自由論題研究報告会が行われた。
出席会員は総数の約半数の多数に達し、遠く大連・朝鮮・台湾からも出席があった。
参考文献
黒澤清.1950.『日本會計研究學會經過報告』(日本會計研究學会『昭和二十五年度 日本會計研究學會會報』)
黒澤清.1971.「第百巻記念号の発刊に題して」『會計』100(1):1-4.
黒澤清.1976.「日本会計学会・雑誌『會計』と同文舘」(同文舘出版株式会社『風雪八十年 同文館創業八十周年史』同文舘出版:141-149.).
日本会計研究学会50年史編集委員会編.1987.『日本会計研究学会50年史』日本会計研究学会.