津守 常弘氏(九州大学名誉教授・神奈川大学名誉教授)

授賞理由
1.ご経歴
津守先生は、大阪商科大学(現 大阪公立大学)をご卒業後、京都大学大学院経済学研究科に進学され、修了後、立命館大学経営学部に勤務された。その後、九州大学に移られ、1993年に同大学を定年退職したのち、神奈川大学経済学部教授に就任、2000年には九州情報大学に移られ、2022年まで勤務された。
2.受賞業績
(1) 研究活動
先生は、会計を統一的に説明する原理を明らかにすることを一貫して研究されてきた。主たるご研究は、配当可能利益概念の歴史的分析、ドイツ動態論研究、アメリカ動的会計理論成立基盤の研究、財務諸表公開制度の研究などである。先生のご研究は、徹底した現実観察と歴史的検証に基づき、会計制度を解明する重厚かつ壮大な理論体系を構築された点において、日本における会計制度研究・会計規制研究の礎を築くものである。
とりわけ財務諸表公開制度の研究は、会計を社会的統制の制度装置として理論的に再構成し、その制度的構造面と計算構造面を統一的に把握しようとする試みであり、会計研究に新たな視野をもたらした。
これらの研究において、競争的資金も数多く獲得し、1988年には「会計基準設定の現代的特徴と方向」で本学会からも学会賞を受賞している。
(2) 教育活動
長らく大学で教鞭をとられている間に、多くの優秀な学生を育成されてきた。その中には、徳賀芳弘先生(本学会元会長)、大石桂一先生(本学会評議員※)、戸田龍介先生(本学会評議員※)など、日本の会計学研究の中枢を担う先生方もおられる。(※注:受賞時点において)
また、1977年に津守先生主導で発足した「九州会計研究会」は、現在に至るまで約50年間、毎月継続的に開催されており、九州地域の学術交流の場として定着している。
(3) 学会活動
先生は、本学会では、1991~93年に、理事・評議員・学会賞審査委員を歴任されている。その他にも、年次大会の統一論題でのご報告や座長も務められるなど、本学会へ多大なるご貢献を頂いた。他学会においても、会計史学会や会計理論学会で会長を務められるなど、日本の名だたる学会の中心で長く活躍されてきた。
以上説明したように、先生のご研究は、会計制度研究・会計規制研究の礎を築くものであり、我々後進の研究者に多大なる影響を与えてきた。また教え子も学界で広く活躍しており、さらには本学会でも理事・評議員などを歴任され、他学会においても要職を務められている。これらの点から、先生が会計学の研究、後進の教育、本学会の運営に貢献され、そのご貢献が日本の会計学研究の発展に大いに寄与したことは明白であり、これら長年のご貢献は、本褒賞を授賞するに相応しいものである。
