研究目的
地方自治体(以下、自治体)の財政状況が厳しさを増す中で、行財政運営の効率化・適正化を高め、また住民や議会等のステークホルダーへの説明責任を果たすために財政の一層の透明性を図ることが喫緊の課題として認識されています。かかる認識のもと、いくつかの自治体において、複式簿記ならびに発生主義会計の導入による企業会計に準じた財務書類の作成などの先行的な取り組みが行われてきました。
また、政府、とくに総務省においては、数次にわたって研究会を立ち上げ、新地方公会計モデルを提示するなどして自治体の公会計の改革に乗り出し、実際にその成果が多くの自治体に反映されてきています。しかし、なおも自治体間の会計方式に統一性が欠けたり、国際的な公会計の動向に準じていなかったりと、もう一段の進展が求められています。
このような状況のもとで、総務省の「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」(座長:鈴木豊氏(青山学院大学名誉教授))は、平成26(2014)年4月30日付で最終報告書を公表し、そこでは、地方公会計の標準化を図る一方で、現行の予算・決算制度を補完し、あわせて地方行財政運営の合理化に資するシステムとして地方公会計を明確に捉え、そのための基準が示されました。また、この報告書を受けて、総務大臣名で、地方公会計の改革に向けての期間工程が明示され(「今後の地方公会計の整備促進について」平成26(2014)年5月23日)、さらに平成27年1月23日にはより具体的な実務指針も作成・公表されました。
これにより、地方公会計はこれまでの改革の過程という理解から、改革後を見据えた具体的実践と活用を検討すべき段階に入ったということができます。
本特別委員会は、新しい地方公会計に焦点を当て、その理論的構造と目的適合性、自治体現場での適用状況と実務的諸問題、自治体経営への新会計モデルの活用実態、さらに新しい地方公会計を導入した後に課題となる地方公監査のあり方等を研究することを目的として、平成26年9月に日本会計研究学会により設置されました。
なお、本特別委員会は、日本会計研究学会の研究対象の裾野を公会計の分野にも広めるべく、若手研究者の育成にも研究活動の目的をおくため、公会計の研究を担ってきた経験のある研究者と若手研究者のバランスを図りながら研究組織を構成しています。